着床障害 不育症 習慣性流産について私が感じたことや本などを読んで整理したことなどをメモ的にまとめてみました。
不妊鍼灸関係者や医療関係者など専門家向きなので専門用語が多くて読みにくいかもしれません。
杉俊隆先生の著書を読ませていただきながら勉強させていただいています。

①不妊と不育症(不育症1:不育症の概要について)

不育症は、定義があります。
しかしながら、現状では不育症の定義をまって不育症の検査をするのでは遅いのではないかと思うことが多々あります。

たとえば40歳で体外受精に挑戦しながら不妊治療をしている方。

2回流産してから不育症の検査をして・・・と言っていると、不妊治療そのもののタイムリミットを越えてしまいます。
流産がからむと採卵が数ヶ月から半年先になってしまうことも多く、治療が中断するからです。

ですので、検査は自費でハードルは高いのですが、私はお身体を拝見させていただいて『おかしいな』と思われた方には、不育症の定義は充たしていなくても、不育症の検査をお勧めすることがあります。

そして残念ながらなのか、早めに発見できてよかったのか、『行ってよかったです』と言う結果が多くあります。

初診でいらしたSさん、お身体を拝見して、不育症では?と思いました。
流産歴もありお尋ねしますと、『不育症の検査はしましたけど、不育症ではないと診断されました』とのお返事。

そこで、『その検査は保険の範囲内ですか?』と伺いますとYESとのこと。
是非、きちんとした不育症の検査を受けて下さいとお勧めしたところ、自費の検査を受けられ、不育症と診断されました。
そしてその後の妊娠でヘパリンを使い、無事に赤ちゃんを抱くことができました。

厚生労働省の研究班によってこんなサイトがつくられています。
http://fuiku.jp/common/teigen001.pdf 不育症の定義は以下の通りです。

【不育症の定義】(厚労研究班の研究成果を基にした不育症管理に関する提言(患者様用)から)

2回以上の流産、死産、あるいは、早期新生児死亡(生後1週間以内の赤ちゃんの死亡)がある場合を不育症と定義します。すでに子供がいる場合でも、流産・死産、早期新生児死亡をくり返す場合は、不育症に準じて原因精査を行っても良いとされていますので不育
症外来を受診して下さい。現在のところ、妊娠反応のみ陽性で赤ちゃんの袋が子宮内に確認されないまま、その後に月経になってしまう化学妊娠については流産回数には含めません。ただしくり返す化学妊娠については不育症に含めるか否かにつき今後検討していく必要があると提言されています。赤ちゃん(胎芽)に染色体異常や形態異常のない妊娠 10 週以降の流・死産や重症の妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)による子宮内胎児発育遅延症例(赤ちゃんが妊娠週数に比べて小さい例)は 1回でもあれば不育症に準じて抗リン脂質抗体や血栓性素因のスクリーニングを行っても良いとされています。該当される方は調べていただくとよいでしょう。

この定義の中で、やはり化学妊娠についても今後の課題ということで取り扱われているのは進歩だなと思います。
着床障害もこのカテゴリーに入っていくのではないかという気がします。

当院の鍼灸治療では、着床の時期から、妊娠初期の12週までを特に『血流活性化の必須ゾーン』として、特に力をいれて治療をしています。是非、ご相談下さい。
そしてなんとか、妊娠12週をこえ、赤ちゃんが抱けるところまで一緒にがんばりましょう。

②不妊と不育症(不育症2:ビッグママ治療室での取り組み)

着床の時期から、妊娠初期の12週までを特に『血流活性化の必須ゾーン』

《女子胞の図》

子宮のことを東洋医学では女子胞といいます。
この女子胞は、東洋医学で考えるところの五臓(肝心脾肺腎)と深く関係をもっています。

※東洋医学で考えるところの五臓とは
五臓六腑と言われる内臓ですが、ここでは臓器そのものではなく「システム」のことをいいます。

女子胞は、生命の土台の力である腎気に強く支えられ、気血をめぐらせるコントロールをする肝によって周期性を持ちます。
まず肝と腎との関係が一番大切なのです。

※肝は、肝臓だけではなく東洋医学では「こころ」も意味します。
※腎は、腎臓ばかりではなく東洋医学では「生殖」すなわちセックスや生命力の源となる臓器です。

肝ーのびやかな心身をつくります。
人間がストレスや気の鬱滞によって非常に大きく左右されやすいと言うことがよくわかりますね。
鍼灸が得意とするところです。

腎ー生命の土台
生命を支える土台としての腎は、卵子をはぐくみ、受精卵を受け止め成長を促し出産までしっかりと胎児を滋養していきます。
鍼灸、ご自宅でのお灸、温灸などがとくに力を発揮します。

生命の土台の力ですから、簡単には充実させることができませんが、この充実こそが、血流活性化が必要な妊娠初期から12週までの時期を支えます。

12週の時期をこえ、女子胞が胎とお母さんの身体をしっかりと結びつけてくれてからは脾胃(胃腸の力)に問題がシフトしていきます。
お身体を拝見していますと、背部腧穴(背中の経穴)の変化がこのとおりです。
脾胃に負担がきつくなり大きく陥凹して手入れの必要を感じさせる場合が多いです。

しっかりと充実した赤ちゃんのために(3000㌘50㎝を目指して)

妊娠の初期(~12週まで)は腎気の充実、下焦※の血流確保が一番大切なポイントです。
子宮の中に沢山の存在するというキニノーゲンという物質は、血管新生作用があるとされています。

右にいて説明

※臍より下の部位をさします。
大腸、小腸、腎、膀胱などの臓器を下焦とします。
肝腎や命門 も下焦に属しています。

不育症の理由に血液凝固系の活性化ということにより血栓ができやすいことがあげられていますが、他にこの初期の段階でのキニノーゲンが胎盤形成に重要な役割を果たし、このキニノーゲンに対する抗体が不育症で初期流産を繰り返す方に高頻度に診られるとされています☆1)。

初期の子宮の血流確保のためにこのようなシステムが人間にあることはまことに不思議。
このキニノーゲンに対する抗体を持つ方は、子宮内の血流が悪く流産につながりやすい。
治療法としてヘパリンがあげられています。
また、不育症の問題は、リスク要因であって決定要因ではありません。

こういった要素があっても、何らかの理由でこの時期をすり抜け健児に致っている方も多いでしょう。

妊娠初期の血流をしっかりと確保し、胎盤が形成させていく時期を助けることで、血流がよくなること、大きな胎盤が作られることが期待されます。
大きな胎盤はしっかりとした赤ちゃんを育んでくれます。

笑顔左

当院で出産なさった方は3000㌘を充たしてのご出産報告をよくいただきます。
そして『胎盤が大きいわねえ~』と助産師さんに言われたという私にとって密かに嬉しい報告も多いです。
3000㌘50㎝を目指して頑張りましょう。

☆1)不育症学級 杉俊隆著P47より

③EBMに基づく不育症診療の実際 杉俊隆著を読んで|問診と不育症 (不育症3:)

EBMに基づく不育症診療の実際 杉俊隆著を拝読していると問診の大切さが書かれています。

過去の妊娠歴について:

流産の状況について聞く。
化学流産なのか、胎芽が確認できなかった流産なお可、心拍確認したものの流産になったのかなどなど。

また、

  • 流産時の超音波などで胎芽の大きさを確認し、超音波上では何週の流産であったのかを確認することが重要
  • 特に妊娠10週以上の原因不明子宮内胎児死亡は一度でもあれば抗リン脂質抗体症候群の診断基準を満たすこともあり重要となるが胎児の大きさが10週以上であったことを確認することが大切であるとしています。

  • 子宮内胎児死亡(IUFD)は実際に胎児死亡の起きた時期の特定と、IUGR(子宮内胎児発達遅延)の有無が重要と。
  • 特に妊娠中毒症の合併、常位胎盤早期剥離、戴眼の著名な血栓、胎盤機能による羊水過少、IUGRなどを伴うIUFDは母体の血液凝固系の異常を疑う必要があり、無事正常分娩した場合でも低体重児でなかったか、妊娠高血圧症候群でなかったかなど聞くべきであると。

ある方が、第一子の妊娠の時の様子を話してくれたときに、胎児ドッグを受診し、赤ちゃんの問題はないが、子宮の血流が悪いので、不育症で使う薬を飲んだ方がよいよとアドバイスされたというお話しを思い出しました。

この方は服薬せず、結局妊娠中毒症になり血圧があがり早期での出産になってしまったと言うことです。
なぜ薬を飲まなかったんですか?と伺うと、産科受診した折に『そういった薬は出せない』と言われ、そのままになってしまったとのことでした。

産科のドクター、胎児ドックのドクターと見解がわかれ、結局こういった経緯になったのですが、第二子の妊娠前に一度検査をうけておくことを私はお勧めしました。

既往歴としてあげられているのは、

  • 血栓症
  • 自己免疫疾患の有無
  • 深部静脈血栓
  • 全身性ループスエリトマトーデスなどのリウマチまたは膠原病
  • バセドウ病
  • 橋本病などの甲状腺疾患
  • 突発性血小板減少性紫斑病(ITP)などなど
  • 自己免疫疾患のある人は、抗リン脂質抗体など流産の原因になり得る自己抗体をもっている可能性もあり注意が必要と。

また家族歴も聞くべきかと。特に両親に心筋梗塞、狭心症、脳血栓、脳梗塞がないか具体的に聞くとよい。
これは確かにそのとおりで、血栓症と言っても、脳梗塞が血栓症とぱっと浮かばないケースは多々あります。

thrombophiliaってなんだろうと調べると、血栓形成傾向と出てきました。
英語辞書で、概念ツリーをみると、

・血液リンパ系疾患 Hemic and Lymphatic Disease
・・血液疾患 Hematologic Disease
・・・血栓形成傾向 Thrombophilia
・・・・活性化プロテインC抵抗性 Activated Protein C Resistance
・・・・アンチトロンビンIII欠乏症 Antithrombin III Deficiency
・・・・播種性血管内凝固 Disseminated Intravascular Coagulation
・・・・プロテインC欠乏症 Protein C Deficiency
・・・・プロテインS欠乏症 Protein S Deficiency
・・・・血栓性血小板減少性紫斑病 Thrombotic Thrombocytopenic Purpura

あー見事にあれこれの言葉が出てきてびっくり。
いやびっくりすることなくて当たり前ですね。
不育症の問題、わかりにくいのに漠然と考えておりました。
もう少し丁寧に学んで行きたい思います。

参考文献
・EBMに基づく不育症診療の実際 杉俊隆著
・不育症学級 杉俊隆著

不育症学級

EBMに基づく不育症診療の実際―基礎から臨床へ

④黄体機能不全 不妊、流産(不育症4)

黄体機能不全について、EBMに基づく不育症診療の実際 杉俊隆著P18ページから取り上げられています。

この中で、不育症患者の被妊娠周期の黄体機能不全がある群とない群をくらべ、次回妊娠の流産率を無治療で比べたところ両群に差異がないという報告をあげています。
つまり、黄体機能不全が非妊娠時にあると認められても、流産率の差異がないということですねえ。
妊娠していないときに調べた検査じゃ意味がないんでしょうかね。

ずーっと昔、ある有名な不妊治療クリニックでは、胚盤胞移植時の黄体補充をしない場合をよくみかけました。
『薬なしなんです』と不安そうに仰っていたのをよく聞いていました。

その後、女性ホルモンの1つ「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を補う作用のあるデュファストンはよく処方されるのをみるようになり、ふーーんそうなのねえなどと思っていました。

不育症からは離れますが、不妊治療の現場で、この高温期になにかするのか、しないのかは結構ドクターや病院によって違うところではないかと思います。
この杉先生の本の中では、『充分な根拠は見出されない』とあります。
根拠なくても効くなら使って欲しいというのが切実な願いでしょう。

でも、いらないものを妊娠初期に使うというのもリスキーな話ではあります。
また、デュファストンを飲んだ翌周期の採卵はあまりよい卵が採れないと仰るドクターもいらっしゃりますので、連続服用をしていたら、いつまでたっても『よい卵に巡り会わない』のかもしれません。

このあたり、はっきりとした結論を待ちたいところですねえ。

⑤夫リンパ球を使った免疫療法(不育症5)

この夫リンパ球を使った免疫療法は、私にとって非常に印象的な出来事です。

夫リンパ球による免疫療法について、不育症学級 杉俊隆著 57ページに、二重盲検法によって逆効果であり倫理上許されないという記載があり、完全否定されています。

1980年代に子供を産み、その当時の育児雑誌を読んでいた記憶がある私にって、実はこれはかなり引っかかる記載でした。
確か当時のたまごクラブとかプレママなんとかみたいな赤ちゃん欲しい系統雑誌には、この免疫療法の話がお勧め治療法でイラスト入りではっきりと紹介されていた記憶があるのです。

一見すると何をばかなことをというような結果のこの免疫療法ですが、あの優しげであったかいイラストは忘れられない記憶でした。ふーーんと思っていると、この本の著者である杉先生のブログにこんな記載が!

http://www.sugi-wc.jp/column/webdir/160.html

引用:夫リンパ球を行なった場合の生児獲得率は80.9%であり、一見良好の様ですが、無治療群の88.6%を下回っています。結局、原因不明ではなく、本当に異常のない不育症患者に夫リンパ球を行なっていた事になります。夫リンパ球免疫療法は、輸血なので、感染症などのリスクもあり、抗リン脂質抗体などの自己抗体を誘導するなどの副作用も報告されています。
決して安全な治療でもないので、安易に行う事は止めるべきです。

ああ、そういうことなんですねえ。
私は杉先生が、EBMにこだわり、あいまいなままの過剰治療から、無治療でOKなのかを診断するのが役目と強くおっしゃる理由がなんだか私なりにわかったような気がします。

当時のプレママ雑誌には、私よりも少し先に妊娠して出産して(おまけに離婚して、再婚して(^-^;と続きますが)の松田聖子ちゃんが育児の日々を綴っていました。

その赤ちゃんは今をときめく神田さやかちゃんです。
ああ、チャンづけしちゃうのもあの時代に妊婦をやっていた同年代のよしみということで許して下さいねえ。
聖子ちゃんが、優しく自分のお腹をさすっていた写真が私の記憶にあります。

医学はこうやって、創造され、検証され、否定されたり、改革進歩して歩んでいくのですね。
ただ、一つの物事を紹介する時には、あの記事のふんわりと温かい感情的な取り扱いにちょっと怖いものを感じました。

紹介する人は、この免疫療法を、流産の人を救う救世主と思って紹介したのだと思います。
食事や生活のことで、テレビや雑誌、本、啓もう活動かはどうしても『感情にのせて』人を動かします。
その是非を考えちゃいますね。

⑥免疫療法の治療成績 | Nk細胞活性と流産 (不育症6)

このNK細胞活性と流産については、不育症を扱う先生方の間でも、見解がわかれるところであり、このあたりはクリニックによってかなり考え方、取り扱いが違うところではないかと思います。

どちらの考え方も読めば納得しますが、比較検討して結論を患者側が出すということは、どちらの先生を信じるかというような、信心をするような境地になってしまうのではないかと思います。

まあ、これはどんな医療でも立ち位置、考え方でおこることで、患者の選択ということになるんですけどねえ・・・。

さて、NK細胞活性で使うピシバニール。かなり痛い注射らしく、つらかったというお声を聞きます。
それでも効いてくれればなんていうことはないということですね。

私にとっては忘れられない症例があります。
爪の根元が赤黒く、これはなんらかの血液凝固系の検査でひっかかるのではと思ったのですが、杉ウイメンズクリニックの検査で
は、まったくの白。

通院、治療の必要なしとの診断でした。
しかしながら検査のあと12週の流産があり、「今わかっている検査の範囲外の出来事かもしれないね、次回の妊娠時にはフォローしていきましょう」という結論になりました。

そして次回の妊娠時の前に、NK活性の診断を受け、ピシバニールを使い無事に妊娠、何度もの流産の後ですが、無事に経過されました。

不育症の治療は、次回無治療であってもかなりの数字で妊娠ー出産に結びつきます。
つまり、その治療が有効であるかどうかを本当に検討するのはなかなか難しいことなのです。

でも、患者にとっては、「その治療が有効であるかどうか」よりも、「いま、子の妊娠を継続させたい」という一点につきるわけで、私はいろいろ対応してダメなときの次の一手を求めることを否定はできません。

2016年2月14日の杉先生のTh1/Th2、NK細胞活性検査についてのインフォメーションです。ご参考まで。
http://www.sugi-wc.jp/news_disp.cgi?news_no=0&id=1456305506_002FFC

⑦糖尿病と不妊MEC食 血糖値の管理(不育症7)

MEC食
M ミート(肉)Eエッグ(卵) C チーズを主食として妊娠をめざそうとするものです。

さてさて、不育症続きです。私も一生懸命頭の整理です。

☆‾゛20ページより

糖尿病

値の高さは流産率のアップとなるも、コントロールすればOKと。

いま、MEC食というのが不妊治療をなさる方の間ではやっています。
ミート(肉)エッグ(卵)チーズをしっかり食べて妊娠をめざそうということですが、このMEC食は、結果として糖質が減り案外血糖値のコントロールにも貢献しているのではないかと思われます。

食事記録を書いていただくと、炭水化物が非常に多く、タンパク質が少ない方が多いです。
また、ヘルシーを目指して肉ぬき、牛乳抜き、卵抜きと。制限食の場合、なんらかの思想信条でやっていると思われますので、そのこと自体はなんともコメントいたしませんが、食事バランスガイドの図表とくらべ、ご自身の食事がどんな栄養素が不足しているのか考え、制限しているものの代替を考えていく必要があると思われます。

低栄養で不安定な体になってしまい、東洋医学でeうところの「気が立ちやすい(ガッツが入りやすい、テンションが上がりやすい)」体になってしまっては本末転倒。

なんだか糖尿病の記載からこんなところに考えが広がってきました。
つながっているのでしょうかねえ。

⑧不育症と甲状腺(不育症8)

2年前ぐらいからでしょうか?
新宿の加藤レディースクリニックを受診された患者さんが、甲状腺の検査に伊藤病院にいったという話を伺うことが増え、ちょっとチェックしたところ、かなりしっかりフォローの体制ができているのを知りました。

そこで、他の内科などで甲状腺TSHの検査結果がOKを出ている患者さんに『念のために行ってみたら』とお勧めしたら、伊藤病院的に10人中シロ(何も治療の必要なし)2人ぐらいという結果で驚きました。

異常値ではないけれど妊娠希望ならば飲むべきという方や、しっかりと甲状腺機能低下症の病名をいただいてくる方まで。
この結果と、自信と説得力ある説明にさすが甲状腺疾患を扱う専門病院ならではの結果だと再認識しました。

伊藤病院は、甲状腺で有名ですね。また、私的にはここは面白いパンフレットで有名です。
以前は疾患そのものもパンフレットで説明されていましたが、あるときから、『それは本で買ってね』という感じになった気がしますが、それでも、季刊で出しているパンフレットや、説明の小パンフレットは秀逸だと思います。

説得力がありますよ、説得力が。

もともと、甲状腺に対する自己抗体(バセドー病や橋本病など)と、自己免疫状態は深いつながりがあるというあたりが、出発点のようですね。

ここは伊藤病院のインフォメーションから引用していきましょう。

甲状腺と妊娠

甲状腺と妊娠について少しまとめておきます。

甲状腺は、首の下の方にある小さな臓器。普段は目立ちませんが、特に『首が腫れているんじゃないかなあ??』と思う方に病院受診をお勧めしますと、『薬を飲むことになりました』などという報告をいただくことがあります。
小さな四苓湯ですね。

食事に含まれるヨウ素を材料にして甲状腺ホルモンを合成してくれます。

この甲状腺ホルモンは、新陳代謝と大きく関わりがあります。
また、妊娠中の場合は、胎所の脳を含めた身体発育や子供の成長に大きな関わりがあります。
妊娠と甲状腺について語られることが多いわけですね。

TSHの測定がよくおこなわれます。
これは脳から甲状腺に働きなさい!!と作用を促すホルモンです。
甲状腺刺激ホルモンといいます。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)
 正常値 :<0.2-4.5μIU

 妊娠を考える人 2.5μIU です。

かなり低めにしていくことが求められるわけですね。
これは、流産を減らすことが分かってきているからです。
TSHが高いということは、甲状腺がやや機能低下しているということ。
チラージンSを服用して補充療法を積極的におこなうクリニックが増えてきました。

説明左。

このチラージンSは甲状腺ホルモンと同じもの。
内服することで、甲状腺ホルモンとTSHのバランスが調整されます。
妊娠中の服薬は気になるところですが。

説明右

ドクター薬剤師さんと相談しましょう。
胎児への影響がある薬ではないようです。ただ、一緒に鉄剤などを飲むと効きが悪いようです。
工夫で対応できるようですので処方されたときに伺っておきましょう。

説明左。

妊娠中はより甲状腺ホルモンが重要になります。
チラージンを飲んでの妊娠であれば、その後の通院も忘れずにしっかりと!

この甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素は、食物から摂取されるミネラルです。
このヨウ素を取り過ぎると甲状腺ホルモンが低下してしまうことがあります。
ヨウ素過剰なのですね。

海藻類に沢山含まれていて、飛び抜けて多いものがコンブ。
ひじきも控えめに。

のり、わかめ、めかぶ、もずくなどの伊藤病院のパンフレットによると制限する必要はなしとのこと。
よかったですねえ。
ただし、このコンブについては、昆布だし、コンブパウダー、昆布茶なども要注意、イソジンにもヨウ素が含まれていますので、うがい薬にも要注意ですね。

⑨不妊治療でもよく話題になる高プロラクチン血症 LH分泌過剰(不育症9)

高プロラクチン血症は、不妊治療でもよく話題になります。
無排卵の場合は治療対象となりますが、排卵がちゃんと起きている場合には治療をしないケースも多く見ますね。
見解が分かれるような感じです。

不育症的には証明されていないので却下と。

LH分泌過剰は、多膿疱性卵巣症候群(PCOS)でよくみられます。
しかしながら、PCOSの有無に限らず、反復流産の原因として報告されていると。
いま論文として肯定するもの否定するものがあり、今後の検討が必要とのこと。

現時点での明確な結論はなしということでしょうかねえ。

⑩染色体異常、不妊不育の検査はいつすべきか(不育症10)

何年か前でしょうか、出生前診断(PGD)が新聞に大きく載りました。
流産を繰り返すご夫婦に大きな朗報だと。

出生前診断をするということは、体外受精をするということです。
しかしながら体外受精そのものが、それほど高い成功率ではなく高額の治療です。
本当に朗報なのかなあと疑問に思っておりました。

そこで、「EBMに基づく不育症診療の実際 杉俊隆著」のなかの26-28ページの記述に目が行きます。

相互転座をもつ不育カップル、出生前診断(PGD)をしてもしなくても、次回妊娠成功率は63パーセント。

PGDをする場合は、3.84回のIVFが必要。ううーーーん。

体外受精をしたことのない方で不育に悩んでいる方でしたら、『体外受精をして出生前診断(PGD)して問題のない受精卵を移植すれば100パーセント流産なく出産できる』というイメージを抱いているのでしたら、これはかなりイメージと違い大きなギャップがあるなあと思います。

ですので、妊娠そのものに問題のない場合は、相互転座の問題解決の出生前診断(PGD)はあまり効果的ではないのではと私も思います。

染色体の検査はこのような考え方もあって、さほど一般的ではありませんね。
今までうちの患者さんでも、ここまでの検査をなさった方は数名でした。
ところが、外国で体外受精を受けた方の資料を拝見したときに、当然のようにこの資料が入っていて不思議な気持ちがしました。

海外では、体外受精をするという決断をしたときに、染色体の検査まで含めてがっつりと細かい検査をしてから入るということでした。
日本では、たとえば風疹の抗体値ですら不妊治療に入ったときのルーティーンではなく、途中で追加検査となり、不妊治療中断ということを何度もみたことがあります。

また何度も体外受精をしてから、不育症の検査に進むとか。
考え方だとか、必要のない人が大多数ということもあるかとは思いますが、年齢要因があって、不妊治療のスピードが非常に大切になっている方の場合は、同時並行に進めた方がよいのではないかなあと思うことも多々です。

ところで、不育症の染色体異常を考えるときに大前提があることを、今回だいぶ納得ができました。

説明右

つまり、不育で悩んでいる人の染色体異常というのは、健康で社会生活を営めるレベルの人間の検査であって、流産胎児の染色体異常のレベルとはまったく違っているということです。

当たり前なのですが、言われてみると納得ですよね。
そしてまた、28ページの最後の方に、胎児の染色体検査について記載があります。
不育症で悩むかもしれませんが、それでもするりとすり抜ける可能性が高いこの染色体異常。

胎児(つまりお子さん)が『知らないでいるというのもひとつの選択肢であろう』ということに私も賛成です。
知ってしまって対応するには荷が重すぎますね。

⑪着床の時期から妊娠初期の12週までを特に『血流活性化の必須ゾーン』として、特に力をいれて治療をしています(不育症11)

体外受精のプロセスは、精子と卵子を体外で出会わせ、受精卵にして子宮に戻すという案外シンプルな流れです。
精子と卵子の状態をよりよくすることや、受精、培養などなど非常に研究が進んでいます。
ただ、移植してからの問題は案外子宮まかせという感じが私にはしています。

ホルモン値をみながらも、あとは胎児の生命力とされることが多い感じですね。
これは生殖というある程度は自然な淘汰が当たり前であり必要な世界であるので、当然の出来事であるとは私も思います。

そのお任せされた子宮。
案外個人差が大きいような気がします。
ですので、この着床から妊娠12週までをがっつり鍼灸でフォローしていくのが私のやり方です。

  • 着床してから、妊娠のごく初期の動脉シグナル →卵黄嚢に。
  • 妊娠8-10週になると、この卵黄嚢腫循環が消失し、臍帯胎盤循環がはじまる。

すなわち、この8-10周の時期に胎芽への血流が変わるわけです。らせん動脉が、cy
totrophoblastic shell(栄養膜細胞層外皮)に侵入してきて血管をない腔が絨毛間腔に
開いて絨毛間腔が母体動脈血で満たされるのは妊娠10-12週です。ここまでで、いわゆ
る初期の妊娠継続の問題です。

そして、ここからさきは、母体の血流の良しあしが妊娠に時に直接影響をもたらしてくる(プロテインcやsの問題)が主題となってくるわけです。

ここで、アスピリン療法と妊娠中毒所の問題も考えたいと思います。
以前に、胎児ドックにて将来の妊娠中毒症のためにアスピリンを飲む必要を提示された方がいらっしゃいました。
産科のドクターは否定され、無治療のままで結局やはり妊娠中毒症になってしまいました。

56ページに、周産期死亡や妊娠中毒症の予防にアスピリンの投与という記載がありはっとしました。
血流をよくすることが妊娠中毒症の予防になるというのは大いなる指標です。
アスピリンの投与ができない場合には、血流をあげる鍼灸をお勧めしたいです。

ただEBMはありませんし、鍼灸治療というのは、西洋医学的な発想よりも体表観察をもとに生命力の調整をしていく治療です。
立ち位置が違いますが、目標は同じではないかなと感じます。

まとめ

着床障害、不育症、習慣性流産。そして体外受精での胚移植後の問題。
西洋医学的な発想で考えていくと、それぞれ別のカテゴリーであるかのように思います。
妊娠には器質的な問題が絡むことがありますので、そういった場合は(子宮の形態異常など)西洋医学的なケアが必要です。

しかしながら血流の問題が主である場合は、体表観察鍼灸は非常に力強いパートナーになると自負しております。

笑顔左

ビッグママ治療室でおこなっている体表観察から立ち向かう鍼灸治療では、着床の時期から、妊娠初期の12週までを特に『血流活性化の必須ゾーン』として、特に力をいれて治療をしています。
力強いサポートが出来ていると自負しております。

是非、ご相談下さい。そしてなんとか、妊娠12週をこえ、赤ちゃんが抱けるところまで一緒にがんばりましょう。

参考文献、Web:

EBMに基づく不育症診療の実際 杉俊隆著
不育症学級 杉俊隆著

不育症学級

EBMに基づく不育症診療の実際―基礎から臨床へ

厚生労働省の研究班による不育症の定義。
http://fuiku.jp/index.html