何年か前でしょうか、出生前診断(PGD)が新聞に大きく載りました。
流産を繰り返すご夫婦に大きな朗報だと。
出生前診断をするということは、体外受精をするということです。

しかしながら体外受精そのものが、それほど高い成功率ではなく勝つ高額の治療です。
本当に朗報なのかなあと疑問に思っておりました。

そこで、☆EBMに基づく不育症診療の実際 杉俊隆著のなかの26-28ページの記述に目が行きます。

相互転座をもつ不育カップル、PGDをしてもしなくても、次回妊娠成功率は63パーセント。
PGDをする場合は、3.84回のIVFが必要。ううーーーん。

体外受精をしたことのない方で不育に悩んでいる方でしたら、『体外受精をしてPGDして問題のない受精卵を移植すれば100パーセント流産なく出産できる』というイメー
ジを抱いているのでしたら、これはかなりイメージと違い大きなギャップがあるなあと思います。

ですので、妊娠そのものに問題のない場合は、相互転座の問題解決のPGDはあまり効果的ではないのではと私も思います。
染色体の検査はこのような考え方もあって、さほど一般的ではありませんね。
今までうちの患者さんでも、ここまでの検査をなさった方は数名でした。

ところが、外国で体外受精を受けた方の資料を拝見したときに、当然のようにこの資料が入っていて不思議な気持ちがしました。
海外では、体外受精をするという決断をしたときに、染色体の検査まで含めてがっつりと細かい検査をしてから入るということでした。
日本では、たとえば風疹の抗体値ですら不妊治療に入ったときのルーティーンではなく、途中で追加検査となり、不妊治療中断ということを何度もみたことがあります。
また何度も体外受精をしてから、不育症の検査に進むとか。

考え方だとか、必要のない人が大多数ということもあるかとは思いますが、年齢要因があって、不妊治療のスピードが非常に大切になっている方の場合は、同時並行に進めた方がよいのではないかなあと思うことも多々です。

ところで、不育症の染色体異常を考えるときに大前提があることを、今回だいぶ納得ができました。
つまり、不育で悩んでいる人の染色体異常というのは、健康で社会生活を営めるレベルの人間の検査であって、流産胎児の染色体異常のレベルとはまったく違っているということです。

当たり前なのですが、言われてみると納得ですよね。
そしてまた、28ページの最後の方に、胎児の染色体検査について記載があります。
不育症で悩むかもしれませんが、それでもするりとすり抜ける可能性が高いこの染色体異常。
胎児(つまりお子さん)が『知らないでいるというのもひとつの選択肢であろう』ということに私も賛成です。
知ってしまって対応するには荷が重すぎますね。